Blog翻訳: 「カスタマーサービスはデジタルファーストであれ」
Oracleがグローバルで展開するCX関連Blogの日本語翻訳を、定期的にご紹介していきます。
今回の記事は「カスタマーサービスはデジタルファーストであれ」です。(※全4回を予定。こちらは第1回です。)
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※本記事は、Daniel FoppenによるThe future of customer service is digital-first serviceを翻訳したものです。
オラクルのカスタマーサービスに対するビジョンをご紹介する前に、今日の業界動向をおさらいしてみましょう。
私達は、企業がカスタマーサービスを提供してくれるのが当然のように思い、また、企業もその手段を用意する必要があると考えているのはなぜでしょうか?
理由は単純で、カスタマーサービスは、カスタマーエクスペリエンス(以下、CX)、さらには、お客様のロイヤリティに大きな影響を与えるからです。今日の企業活動は、「体験」を競争の軸としています。「体験」は競合他社との差別化要因になると同時に、長期視点で生き残るための重要なファクターです。
CXの競争における課題とは?
持続可能で実現可能な方法で、差別化要因を作り出すことは、簡単ではありません。
例えば、商品の値下げ、パッケージの変更、リブランディングといった活動は、簡単に真似されてしまいます。また、マーケティングオートメーションの導入により、お客様とのやり取りを増やすことはできるかもしれませんが、お客様に直接的に価値提供をするまでには至りません。同様に、業務効率化も、経費の削減にはなるかもしれませんが、同時にCXの低下も招いてしまうかもしれません。
しかし、カスタマーサービスの向上に取り組むことは、多くのお客様接点で、ブランド価値を向上する差別化要因になりえます。
企業の担当者と何かしらやり取りをした際のことを思い出してみてください。購入前や購入後のサポートといった、カスタマージャーニーのどの地点かに関わらず、カスタマーサービス担当とやり取りをしていたり、製品仕様等について記載されたナレッジベースにアクセスしたりした経験は、「カスタマーサービス」と言えます。さらに、ECサイトでカートから離れようとした際に出てくるチャット画面も、「カスタマーサービス」と言えるでしょう。
それでは、これらの「カスタマーサービス」体験を差別化するにはどうすれば良いでしょうか?カスタマーサービスにまつわるテクノロジーはコモディティになりつつあります。Forresterは、このことを「Digital sameness」と呼んでいます。多くの企業は、既に、チャット、ビデオ通話、SNSでのサポート、セルフサービスで利用できるマイページ、コールセンター、または、チャットボットといったものを用意しています。結果として、今日のカスタマーサービスをリードする企業は、どんなにオペレーションがうまく行っていたとしても、テクノロジーの面から差別化することは難しくなっています。
カスタマーサービス戦略の現状を示す3つの観点
Oracleは、カスタマーサービスの未来についてビジョンを作成するにあたって、今日のカスタマーサービスについて、3つの観点から現状を整理しました。
1. 受動的(リアクティブ)
今日のカスタマーサービス戦略は、受動的(リアクティブ)であることを前提としています。カスタマーサービス担当は、メールやチャット、電話を自席で待機していることでしょう。すなわち、お客様側が常にイニシアチブを持っていることになります。サポートのプロセスや、待ち時間の設計、KPI、コンテンツ、チャネルの使い分け等は、全て20世紀中頃の考え方で成立しています。チャットボットや、ナレッジベースさえも、お客様からの質問や行動を待っています。
2. 画一的
今日のカスタマーサービス体験は、全てのお客様に対して画一的な対応になっています。例えば、購入前と返品希望のお客様が、または、お得意様、リピーター、ブランドのファンと、新規顧客が、画一的に「お客様」としか捉えられていません。Webサイトも、自動音声通話も、オペレーターも、標準化されたメッセージとプロセスに従うことが多いでしょう。
3. 業務プロセスが効率化に寄りすぎていて、お客様中心でない
業務プロセスの設計は簡単ではなく、結果的に、多くのステークホルダーが妥協することになります。多くの場合、妥協の矛先はお客様に向いてしまいます。例えば、自動音声通話サービスで、20桁のお客様番号を入力させることを強いるような場合です。もちろん、オペレーターからすれば楽なのですが、お客様としては手間になります。
Oracleのカスタマーサービスの未来についてのビジョンは、これらを打破する新しい視点になっています。キーワードは、「プレディクティブ(お客様の行動の予測)」「ハイパー・パーソナライズ(お客様に合わせて最適化)」「ハイパーコンビニエント(お客様にとって便利)」の3つです。
Oracleが提唱する、デジタルファーストなカスタマーサービスのための新3要素
1. プレディクティブ(お客様の行動の予測)
プレディクティブ(お客様の行動の予測)なサービスでは、お客様の抱える課題を解決する際に、企業側がイニシアチブを握ります。すなわち、Webサイト上で、必要なタイミングと場所に機能を使えるようにしたり、お客様の期待に添えなかった際にメッセージを送信したり、お客様のデジタルジャーニーをもとに、お客様の手間を取ることなくヘルプを提示したりすることを意味します。
こういったプレディクティブ(お客様の行動の予測)なサービスには多くのデータが必要になります。例えば、イベント、行動、プロファイル、取引、CRM、資産等のデータを用いることで、リアルタイムかつお客様の状況に合わせた、プレディクティブ(お客様の行動の予測)なサービスを提供することができます。そのためには、幅広いデータの収集と統合、それらを活用しやすい形式へ変換することが必要です。
2. ハイパー・パーソナライズ(お客様に合わせて最適化)
お客様のニーズは人それぞれ異なりますし、カスタマーサービスもそのはずです。
ハイパー・パーソナライズ(お客様に合わせて最適化)されたカスタマーサービスの例をいくつか紹介します。
例1: ゴルフクラブを探しているお客様がいて、前回のWebサイト訪問から数日が経ったとします。戻ってきた際に、マイページがゴルフ用品中心に最適化されていれば、お客様は簡単に商品検索を再開することができるようになっています。
例2: 何らかの製品の修理をしたいお客様がチャットボットに問い合わせた際、チャットボットが修理に関する回答だけを自動的に選択することで、お客様は簡単に問題を解決できるようになっています。
例3: 荷物の配送が遅れた場合に、その状況を、Webサイト、モバイルアプリ、チャットボット、マイページ、自動音声通話、オペレーター、ナレッジベース、リアル店舗の店員といった、あらゆる顧客接点で共有し、お客様の関心が荷物の遅れにあることを認識できている状態です。
こうした体験を提供できるのは、デジタルファーストな企業だけです。お客様が置かれた状況を、カスタマージャーニー上のすべての接点で把握するだけではなく、それらの情報を組み合わせて、ハイパー・パーソナライズ(お客様に合わせて最適化)された体験を提供することが必要です。
3. ハイパーコンビニエント(お客様にとって便利)
ハイパーコンビニエント(お客様にとって便利)なカスタマーサービスのためには、業務プロセスを、業務効率化だけではなく、お客様にとってできるだけ便利にすることを目的に設計することが必要です。
最近では多くの個人商店でもチャットボットを用意していますが、多くはごく簡単な質問にしか答えることができません。
質問に答えるだけではなく、ナレッジベースから関連する記事を見つけ出したり、状況を対話型で聞き出してくれたり、その結果をバックオフィスの業務プロセスへ連携し、データを更新したり、お客様情報を取得したり、ステータス確認をしてくれるようなコンシェルジュ型のAIがいたらどうでしょうか?
お客様とオペレーターのメッセージ交換が、非同期型で行われ、お客様の都合の良い時に返信でき、待ち時間という概念が無くなったらどうでしょうか?
ハイパーコンビニエント(お客様にとって便利)なカスタマーサービスには、モダンな顧客接点を最大限活用することも含まれます。ビデオ通話を用いたその場でのトラブル対応、オペレーターによるお客様の画面の共同操作、モバイルアプリでの通知やサポート状況の自動メール送信などによって、お客様のイライラを減らすことができます。
究極的には、ハイパーコンビニエント(お客様にとって便利)なカスタマーサービスは、企業目線の複雑な業務プロセスを、お客様からは見えないようにすることが中心になります。ワンクリックで注文ができたり、Uberでタクシーを予約したり、新しいiPhoneを使い始めるのと同じくらい、簡単であるべきです。
デジタルファーストな企業は、幅広いチャネル、自動化ツール、そしてサーバーレス技術を、ひとつのプラットフォームで活用することで、ハイパーコンビニエント(お客様にとって便利)なカスタマーサービスを実現しています。
デジタルファーストなカスタマーサービスはDXを超えていく
デジタルファーストであることは、デジタルトランスフォーメーション(DX)とは異なります。特にパンデミックの状況下では、比較的容易にDX可能なものは、既にDXされたものと捉えるのが良いでしょう。
また、DXは、終わりのあるプロジェクトのようなものに思われがちです。
一方で、デジタルファーストなカスタマーサービスとは、決められたスコープがある訳ではない、継続的な変化を促す戦略と捉えるべきです。
ここ数年で学んできたように、企業はできる限りアジャイルであり、新たな現実に対して対応できる力を保つ必要があります。すなわち、完了という状態がなく、常に流動的であるという状態です。世界はいつも大きく変化しています。
デジタルファーストなカスタマーサービスは、CXの差別化に寄与するだけではなく、デジタルファーストであること自体が、必要に応じてCXを変化させることに繋がります。
この記事は、「カスタマーサービスはデジタルファーストであれ」の連載(※訳者注: 第4回までを予定)の第1回で、カスタマーサービスをリードする皆様に向けた最初のステップとして位置付けています。
今後の更新を楽しみに頂ければ幸いです。